なぜ「新下駄配列」を選んだのか
なぜローマ字入力・かな入力ではダメなのか
入力効率うんぬんの話は議論し尽されていると思うので割愛します。
私がローマ字入力をやめる理由はただ一つ。
尊敬する、まつもとゆきひろ氏(プログラミング言語 Ruby の作者)の言葉です。
「ハッカーは自分が使う道具にこだわりを持たなければならない」
まつもとゆきひろ氏は日本語入力に独自のキー配列、きゅうり改を使っているそうです。
https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0704/24/news006_2.html
(自分が見たのはこの記事じゃなかった気がしますが、内容はだいたい同じです)
単純な私はこの言葉に感銘を受け、当時主流だった「窓使いの憂鬱」というキーバインド変更ソフトできゅうり改を使い始めました。
そこから更にキーバインドを改造し、プログラミング言語編集に特化したショートカットを追加したり、きゅうり改を改造した「きゅうり改・改」とでも言うべき配列を作ったり。
一時期、私は最強のハッカーになったのです。
しかし社会はそれを許しませんでした。
同僚のPCをちょっと使う機会があったりして、ショートカットや日本語入力を間違いまくって白い目で見られたり。
許可されていないソフトをインストールするために申請が必要だったり。
派遣先だと、そもそも申請すらできなかったり。
窓使いの憂鬱の開発終了という出来事もあったり。
私は「きゅうり改・改」を捨て、ローマ字入力に戻しました。
キーバインド改造は最小限、それも自宅PCのみにしました。
会社では素のWindowsショートカットしか使いません。
私は普通の社会人になることを選んだのです。
しかし今こそ!
会社を辞め、「自由人」となった今こそ!
ハッカーとしてのこだわりを取り戻すべきであると、そう思ったのです!
なぜ新下駄なのか
日本語入力方式は数多くあります。
その中からなぜ新下駄配列を選んだのか?
言い方はちょっと悪いですが、消去法です。
きゅうり改・改
当然、最初に考えたのは自作配列「きゅうり改・改」でした。
しかしHDDを全検索しても窓使いの憂鬱の設定ファイルは見つかりませんでした。
たぶん、PC移行時に消してしまったのでしょう。
「きゅうり改・改」を捨てて十数年。
どんな配列だったか記憶の片隅にもありません。無念。
きゅうり改からの再自作
配列の自作はまさに「沼」です。
時間がいくらでも溶けていきます。
Unity・ゲーム開発・ウェブ制作の勉強もしたいので、あまり時間を取られたくありません。却下。
T-code
冗談かと思われるかもしれませんが、本気で検討しました。
T-codeとは、平仮名だけでなく漢字も出せるキー配列です。
漢字変換の手間がないなんて夢のようじゃないですか!
(習得難易度は鬼ですが)
とりあえず平仮名だけ覚えれば文章は入力できるし、漢字はおいおい覚えていけば良い。
しかしネットで調べても、簡単な導入のしかたが見つかりません。
どうやら、T-codeには特許があるらしい。めんどい。却下。
親指シフト系
本来はスペースキーの下に特殊キーがある専用キーボード向けのキー配列らしいですが、一般キーボードではスペースキー横の「無変換キー」「変換キー」を特殊キーの代用とする配列です。
NICOLA配列、Orzレイアウト、飛鳥123配列、かえでレフティあすか、蜂蜜小梅配列が該当します。
しかし私のキーバインドでは「無変換キー」はプログラミング言語編集モードに移行する超重要キーなので、「無変換キー」を使う配列はNG。却下。
薙刀式配列
スペースキーでシフトする配列です。
スペースキーを押しながらタイプすると別の文字が出るパターンですよね?(ちゃんと調べてない)
スペースシフトは、昔自作配列で試したことがあるのですが、KeyDownではスペースが出なくて、KeyUpで出るんです。
スペースを出したくてスペースキーを押したとき、すぐにスペースが出ないと何というか、前につんのめる感覚があって嫌なんですよ。
スペースシフトの時点で却下。
(紅皿の零遅延モードだとすぐにスペースがでるのだろうか?だとすると一考の余地ありだったかも)
大西配列
これは日本語入力方式というより、QWERTY配列を根本から見直そうという、Dvorak的な配列ですね。
ローマ字をもっとも入力しやすいように設計されているようですが、私はプログラマーなので、入力の半分くらいは英語なんですよね。却下。
Dvorak
こちらは英語も入力しやすい設計ですが、フリーランスプログラマーとして活動を始めたときに、キーバインド変更ソフトを入れられない職場に入れられたら困るなあ。
社会と完全に縁を切らない限り QWERTY の呪縛からは逃れられないのだよ。却下。
JISかな配列
「こだわり」が足らん。却下。
残った候補
- 月配列
- 下駄配列
- 新下駄配列
- かわせみ配列
- かわせみ配列改
- よだか配列
月配列と下駄配列は、私が自作配列沼にいた頃からあって、名前だけは知っています。
月配列は2ストローク打鍵、その他は2キー同時打鍵。
後発が全て同時打鍵型なのは特徴的ですね。
やはり (タン)(タン) より ((タタン)) の方が速いから、必然的にそうなるのか。
うーん、同時打鍵。どうなんだろう。
打鍵タイミングがずれてミスタイプが増えたりしないのだろうか?
同時打鍵型が多いということは、慣れれば問題ないのかな?
挑戦してみる価値はありそう。
ということで、月配列は一旦除外。
下駄配列は、新下駄配列の旧バージョンのようなので除外。
かわせみとかわせみ改は、ほぼ同じ。よだかはかわせみと同作者。
これで候補は3つになりました。
- 新下駄配列
- かわせみ配列(改)
- よだか配列
ここで、各配列のキーマップを比較してみました。
かわせみ、よだかは母音がまとまっていて、3キー同時押しあり。
新下駄配列は拗音以外バラバラで、3キー同時押しなし。
新下駄配列は、打鍵数を少なくして、タイプ速度を極限まで高めようという「こだわり」・・・いや、執念を感じます。
新下駄配列、キミに決めた!
時は流れて
新下駄配列を覚えよう!と決心したのが 2025年2月の頭。
やばい、挫折しそう、と思ったのがその3日後。
おそらく挫折者が大勢いるだろうと思ったので、新下駄配列タイピング練習ゲーム「新下駄で歩む」を制作しました。
そして約1ヶ月後、新下駄配列でこのくらいの文章が打てるようになりましたよ!
AutoHotkey v2.0用の新下駄配列設定ファイルも公開しています。